タイヤのお話し
今回は、タイヤのお話をしましょう。
911シリーズのタイヤは、N指定であります。 じゃ、どれくらい前からN指定をメーカーが発表したかというと、これは専門家に任せるとして、930の時代には確立されており964の時代には数社のメーカーから発売されるようになりました。 国産ですとBSさんが圧倒的に多いですが、古くはヨコハマさんも非対称ラジアルでN指定となりました。 外国製ですとミッシェラン、ピレリー、コンチネンタル、グットイヤーです。(他にもありましたら私の勉強不足という事で。) このN指定のことを、まだ多くの方々が知りません。 お客様側は当り前として、タイヤ販売店、そしてタイヤメーカー販売代理の方々が、です。 写真の白い964カレラ2は、弊社のポルシェとしては最初のテストカー(デモカー)でした。 93年のワンショットです。ECUチューンとチタン製EXマフラーKIT、サスペンションKITと6点ロールバー、SPG…。その当時としては、頑張って作った車両でした。 今では、ファインチューンの1つですが…。その当時、同じ位の馬力の車両が他のチューニングショップで600万円かけて作ったと自慢されていた車両と性能を競い合う為、谷田部の高速周回路に持ち込んで取材したものです。 ゲンロク誌の取材中のものです。最高速は274km/hで、この記録は当分破られませんでした。 馬力は280ps位出たと思います。 エンジンには全く手をつけていませんでした。 フライホイールもノーマル。 この当時は、国産車も盛んにチューニングしていましたので、谷田部は毎月の様に行った記憶があります。 この前後だったと思いますが、まだ16インチのホイールだった時にパンクをしまして、リヤタイヤでしたがテストを急いでいたので国産のN指定外にタイヤを装着して高速道でテストに行ったのですが、もうそれはサスペンションの一部が折れたのかと思う位、慣行しました。 人間、体験すると一生忘れないということを、身を持って感じた体験でした。 偉そうに語っている僕も、皆さんと同じであります。最初は…。 博識の方、ポルシェフリークの方、そしてこの貴重な体験をされた方で、その理由を理解された方々は、又、しゃべるな!と思われながら見逃して下さい。 最近ポルシェの中古を購入された方、又、最近タイヤを交換された方、何かステアリングフィールが…まっすぐ走らないな!アライメントが狂ってきたかな…と悩まれている方は、それが正常な場合が多いです。 N指定でないタイヤが現在装着されている車両、最近N指定外のタイヤに交換された方、まっすぐ走らないで当り前なのです。 ポルシェ911シリーズは、930以降3.0L以上の重い重量のエンジンを後輪車軸以降の後方に付いておりまして、タイヤの重量方向の負担は、FR車、及びミッドシップ車に比べ1.5倍以上に大きいのです。 これがどういうことかと説明しますと、タイヤのサイドフォースに加速時、減速時、言い換えれば、アクセルを踏んだ時(特にハーフスロットル以上の)、放した時にエンジンの重量分の負担が増し、結論としてタイヤを大きく変形させます。 そうすると、リヤ側が腰砕け状態となり、瞬間に振られます。 ステアリングにそれが伝わりますので直進していますと、特に100q以上の高速道路では、それが謙虚に表れ、振られた反対方向に修正舵をあてますから、片手運転で鼻歌なんか歌ってられません。 雨のハイドロプレーシング状態ではありませんが、両手でしっかり握ってないと不安です。 ポルシェって敏感な車だと思わず、こんな車はオレしか操れないな!などと優しいお心持ちのアナタはタイヤメーカーから表彰されるでしょう。 ですから、それらの不安な走行がタイヤによって生じていることを理解されているなら、このタイヤは減って次の交換時期に新しい物、それもN指定にと思われている方々は、それでも良いでしょう。 Sタイヤは、どうなんだとおっしゃる方々、これについては、Sタイヤはあらかじめスポーツ走行を想定して設計してありますのでサイドフォース(サーキットでの横Gに対応して)には、適応しています。 但し、一部のメーカーでは強烈な横Gに耐えかねず、サーキット走行中にバーストした例があります。 これは、走る前からかなり低圧に空気圧を調整し、タイヤの発熱を測定さえしないでいる方々です。 一般常識としては、サーキット走行される場合は(経験者は別として)最初の完熟走行から3〜4周はタイヤの発熱のためと各部チェックの為、ゆっくり走行されることをお勧めします。 そしてピットインして少しずつ空気圧を調整して下さい。 とにかく、除々に調整、いきなりの全開走行は謹んで下さい。 プロのドライバーの中には、空気圧は最初にどう調整したら良いですか?と質問され、通常の設定圧でO.Kですと言われる方々もおられるくらいにタイヤの空気圧のトラブルは多く、それをふまえて余計なことをしなくて良いという方々もいます。 これは当たらずとも遠からずですが、空気圧は温度が上昇すれば、体積は膨張しますので完全無欠の窒素を押入れされていても上昇します。 95年のル・マン24Hレース本番中のワンショットです。 自分が撮った写真ですが、本来はピット側にいるはずでしたが、我がティームの車両は早々にメカトラブルでリタイヤしましたので、半分観光気分であっちこっちに出かけて撮りました。 トヨタのサードティームで出場したスープラ80です。 この時は、ニッサンもGTRで出場していました。 この当時は993GT−2が多数出場していまして、そんなに速くはないのですが(もちろんスープラより遅かったです)レースのリザルトでは、どのティームも生き残ってゴールしていました。 このスープラは、当時シーケンシャルを初めて取り入れてましたが、12時間程度しかもたない事が最初から分かっていた為、30分位で交換する計画でして、その通りミッションが壊れ大騒ぎで交換しました。 ポルシェは24Hを走りきっていました…。 タイヤはというと、バーストはやはり多くの車両が被害にあっていました。 消耗品の中では、燃料に続き消費量大ですが、ル・マンの場合、給油2回に1回の割合で交換するのですが、一般の車両がどんなに頻繁に交換される方でもサーキット通いする方でも1ヵ月に1回位です。 比較にはなりませんが、物凄い消耗品ですよね! 皆さん、特にポルシェに乗っている方々、タイヤをケチらないで下さいね。 唯一、道路と接触して、ドライバーに伝える重要なパーツなのですから…。 2年も3年も山があるから交換しないでは済まされません。 そういう車なのですから…。 現在、タイヤはすごく進歩していますが、やはり限界があります。 10年前に比べると、スポーツタイヤのラジアルタイヤがその当時のSタイヤ相当のグリップ力を持っています。 しかし、コーナーリング時は一般道路もサーキットも限界を越えると、横方向にスライドしますし、直進方向ではブレーキングをハードにしますと、やはりスリップしています。 ABSやTRC等、スピンやスリップしないよう最新の車両は、コントロールしてくれますので、結構、無茶な走りをしても何事も無かったかのように走行してくれます。 それを錯覚して、自分の運転技術が上手くなったと思われている方々も多いです。 時間とお金に余裕の無い方々も含め、レーシングスクールを経験されることをお勧めすます。 きっと新しい体験をされ、車に対する考え方と運転方法、運転姿勢が矯正され、どんどん向上していくと思います。 今、国産車ではドリフトが流行っています。 今年のD1グランプリは、初戦はアメリカで行われました。 自分もこれからドリフトを改めて練習したいと思っています。 チャンスがあれば、あれは良い経験になりますよね。 今、真剣に簡易ドリフト装置を考えています。場所が必要ですが、ヒットしませんかね! 交差点をおばさんがドリフトで抜けていったら、オイラは本当に尊敬しますです。 十数年前、ルーフ社の930イエローバードに伝説のドライバー、ステファン・ローザがGパンと素手で操り、豪快にドリフトしながら、タイヤスモークをあげてニュルブルクリンクを走行しているビデオがありました。 これを見て、多くの方々がポルシェはドリフト出来るんだと目からウロコが落ちたみたいに感動したもんです。 あのローザ氏がセッティングしたCTRを日本に持ち込んで、富士を走行した日本のプロドライバーは殆んどの方々のインプレッションは、柔らかすぎて走れないと大不評でした。 今考えると、ローザ氏にしてみるとパワーがあればドリフトするのは当り前(あの当時の某メーカーのタイヤでは)で、ヨーロッパの連中は、あのフワフワのセッティングがヨーロッパでは当り前だったのです。 しかし日本では、それを操れる、そして理解できるプロはいなかったと思います。とにかく、グリップ一番でしたから…。 皆さん、車はドリフトして当り前なのです! これも、昔、お話したような気がします。 年をとると同じ事を何回もしゃべる…。 ああ、これも…。 今回は、グチが多いかな…。 平成17年3月16日 鶴 田 昭 臣
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